本間勇人 の Goodware Times

2010 年 1 月 のアーカイブ

立命館アジア太平洋大学(APU)の存在意義[03] APUの自由

2010/01/20

カテゴリー: イノベーション


☆APUを訪れた時、祖国リベリアの内戦で、ギニアにのがれた学生と話をする機会を得た。その内戦の凄まじさ悲惨さは表現を絶するものだ。彼はBBCでも活躍しているそうだ。仲間に呼び掛ける。しかし、内戦が当たり前になっている国では、その声が届かない壁もある。自由とは何か理解するフレームがないからだ。

 

☆心の壁とでもいおうか。ああ村上春樹さんが壁にぶつかる卵になるというのは、こういうことだったのだとそのときやっと気づいた。言葉ではさんざん語ってきたが、言葉が身体に染みいるとはこのことだったのだ。

 

☆だから、リベリア出身の学生の夢は、「私の夢は世界中の人に自由な言動が保障されることです。そのために国際機関で働きたいのです」と明快・簡明に日本語を放つ。その言葉に感銘できる自分に、彼の言葉の理解を妨げる壁が自分の中にないかもしれないという期待と喜びをもたらしてくれた。

 

☆自由な言動が保障されている日本人は幸せだとも。だからAPUに志願したとも。それなのに、自分の考えを自由に発言しなかったり、正しいと思うことを行わなかったり、自由ではないと駄々をこねたり、なんて私たちはもったいない、無駄な時間を過ごしているのだろう。

 

☆いっしょにいた他の出身国の違う学生も自由について語る時、ある共通点があった。それは「いつもいっしょに」、「仲間」、「チームワーク」「世界の問題」というキーワードがでてくる。個人の自由の尊重と友人や学校や家族、社会がそれぞれ幸せなシステムになることを考え、企画し、起業し、働きかけるのだという点だ。

 

☆近代というエポックの始まりは光と闇を一度に生み出したが、APUの自由は光である。万人の万人の闘争を乗り越える自由の領域、権力や権威の同調抑圧力をはねのける自由の領域、だからといってエゴをふりまくような似非自由のワナに陥らない自由の領域を形成し持続可能にしようという意志を感じる。

 

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☆この意志こそ日本の明治以降から今も生まれ続けている≪私学の系譜≫としての私立中高一貫校の建学の精神である。私立学校が世界の苦しみ痛み悲しみを共有し、解決しようと働きかける自由な言動の領域にあるということをAPUで改めて確認できた。純粋に≪私学の系譜≫という世界精神を持続可能にできる大学はAPUだけかもしれない。ここでは日本の公立高校出身の生徒もその精神を継承することができる。私学の教育のクオリティを広めなくてはならないというのが、≪私学の系譜≫のミッションであるが、その拠点がAPUなのかもしれない。

立命館アジア太平洋大学(APU)の存在意義[02] APUサバイバル能力

2010/01/17

カテゴリー: イノベーション


☆APUでは、留学生があふれていて、チームワーク、コミュニケーション、メンター、リーダーシップ、リサーチ力、プレゼン力などサバイバル能力をベースにした学生の人間力の大きさに驚愕したのであるが、その1つの分かりやすいケースは、マルチカルチャラル・ウィークというイベントだろう。

 

☆中国、タイ、ベトナム、ラテンアメリカ、モンゴル、日本、台湾などいくつかの国・地域の民族料理や歌・ダンスなどを通じてその国の文化・言語を紹介するのが目的。私たちが訪れた時は台湾ウィーク。ランチのときラウンジで、台湾料理を紹介していたり、ちょっとしたパフォーマンスがあったり、ブースで文化を紹介していたり、ホールではパフォーマンスの準備がすすめられたりしていた。ホールで行われた今までのパフォーマンスのいくつかはYouTubeに投稿されているので、検索してみるとよい(たとえば、ベトナム・ウィークの画像などおもしろい)のではないだろうか。

 

☆さて、台湾ウィークでは、もちろん台湾出身の学生が中心となって企画運営をするのだが、他国出身の学生も参加するわけだから、異文化を肌身で感じることができるイベント。ボランタリーで参加型異文化体験となっている。

 

☆問題は、企画運営はコアメンバーが進めるにしても、パフォーマンスに参加する多くの学生とどのようにコミュニケーションをとるかその組織作りだ。どこかの企業が行うのだったら、費用を払って、全員でリハーサルを行えるが、APUの学生生活の基本は徹底した勉学なのである。寮であるAPハウスでは、夜中の1時まで勉強しているという。だから、勉学の合間で効率よく準備をしているのだ。

 

☆とはいえ、短期間でラウンジが運営者で埋まるほどの人数の学生が、まるで以心伝心のように動けるのはどうしてなのだろう。実はこれがAPUの学生のチームワーク、コミュニケーション、メンター、リーダーシップ、リサーチ力、プレゼン力などサバイバル能力の面目躍如なのである。

 

☆そしてなんといっても、APUキャンパスにあふれているIT機材が、このサバイバル能力を拡張するのである。IT機材とインターネットがないと、講義も企画もイベントも遂行できないくらい高水準の当たり前知=暗黙知ができあがっている。

 

☆マルチカルチャラル思考としてのサバイバル能力とITの暗黙知のインテグレーションは、時空を超えられるのだ。コミュニケーションのクラッシュは、互いの理解不足もあるが、情報のやり取りの遅滞という技術的な問題が実に大きい。互いに思いは通じていても、情報渋滞が、無駄なコストを山積させるのがハイパー近代社会のリスクなのである。しかし、MCThinkingとTacitITを統合しているAPUの学生にとっては、このリスクは乗り越えられるのだ。

 

☆マルチカルチャラルというのは多言語主義だから、意志の疎通に苦労はしない。互いの時間のGAPはスカイプで、情報交換することによって解消できるし、YouTubeでダンスや演奏のモデルを情報交換できる。組織をチームに分けておけば、どこかでそれぞれがリハしておいて、あとは本番でいっせいに息を合わせるだけ。

 

☆自律分散協調系とは、前東大総長が提唱していたが、それがすでにAPUでは実践されてきたのだ。就職内定率95.6%というのは、APUサバイバル能力の証明でもあるのではないだろうか。

立命館アジア太平洋大学(APU)の存在意義[01] APUから未来へ

2010/01/15

カテゴリー: イノベーション


☆別府という自然環境、別府を未来都市にするための都市デザインシミュレーションのチャンス、立命館グループの人的物的リソース、APUキャンパス及びITインフラ環境の充実度、寮棟群の満足度、横断的学際的かつプラグマティックなシラバス(CAP)の豊かさなど、APUのマルチ・インテリジェンスを形作るネットワークの多様さに驚かされる。

 

☆また、アドバイザリー・コミュニティという奨学金支援、就職支援、インターンシップの受け入れ、講演会支援などを実施する有力企業や有識者による組織づくりは、APUのビジョンの自己実現力の高さを証明している。

 

☆しかし、何よりも凄まじいのは、6000人強の在学生のうち約50%が留学生であるということである。キャンパスを訪れれば、すぐにわかるが、パーフェクトに海外の大学そのものである。現在90カ国弱から留学生が在学していて、英語と日本語のみならずそれ以外の言葉で話している。

 

☆夜、別府市内を散策したときに、5人の学生とすれちがったが、1人はドイツ語で携帯電話をかけ、2人は英語で話し合い、もう2人はアラビア語系の言語で話し合いながら歩いていた。そんな姿が、キャンパスを埋め尽くしている。

 

☆大分合同新聞(2009年12月1日)によると、「人口10万人に対する留学生の数が大分県は339.8人となり、東京都(329.4人)を抜いて初めて全国1位になった。定員の半分近くを留学生が占める立命館アジア太平洋大学(APU・別府市)の存在が大きい・・・」ということだが、なるほど実感なのだ。

 

☆いずれにしてもこんなに留学生があふれている大学は、日本では他にない。しかし、量より何より質がすごいのだ。チームワーク、コミュニケーション、メンター、リーダーシップ、リサーチ力、プレゼン力などサバイバル能力をベースにした学生の人間力の大きさに驚愕なのである。

 

☆国際理解教育、キャリア教育などをどうするか悩み苦しんでいる中高や大学が多いが、まずはAPUを体験するのがよいだろう。昼食時にラウンジで学生とディスカッションすれば、日本の未来の教育、未来の人材育成のヒントがそこにあることに気づく。この気づきの拠点がAPUの存在意義の1つであろう。