◇今年も全国学力調査テストが実施されました。賛否両論、喧々諤々ディスカッションが起きているようですが、1つまったく議論されていないことがあります。このテストはOECD/PISAを参考にして作成されているのですが、似て非なるものなのです。
◇PISAでは、読解リテラシーのレベルを設定しています。どこまで読むのか、どこまで考えるのかというレベルの基準の仮説を立てています(レベルについては詳しくは岡部憲治氏の「世界標準の読解力」のブログの中の「PISA3側面とレベル」をご覧ください)。
◇また、PISAだけでは、不足しているレベルもあるので、岡部氏と私は私立中学入試の分析を通して、補完しました。
レベル0 知識を覚える
レベル1 情報を確認する
レベル2 情報を整理する
レベル3 情報を分類・照合する
レベル4 論理的に思考する
レベル5 批判的に思考する
レベル6 創造的に思考する

◇OECD/PISAはレベル1からレベル5までを要求しています。中学入試はレベル0からレベル6まで要求します。学習指導要領はどうでしょう。それは全国学力テストを分析すれば明らかなんです。レベル0からレベル3が中心なのです。もちろんレベル4問題も中3で1問出題されていますが、この程度ということは、このレベル4は現場では重視しなくてもよいというメッセージを投げかけているようなものです。
◇ここに公立と私立の教育格差があるのです。私立学校を受験しようと考えている保護者のなんとも言えぬ不安の一つにある格差は、このことを意味しています。つまり、このような格差が学習指導要領の規制からきてるということなのです。それが全国学テで明らかになったというのですからまさにパラドキシカルです。

◇島国気質官僚国家としては、あまり国民が考えるようになっては困るわけで、知識を覚え、情報確認・整理・分類・照合できれば労働力としてはエネルギッシュなわけです。しかし、世界経済の中で、日本だけが極端に成長率が減じている今、そういう教育がもはや有効ではないことが証明されているはずです。しかし、今回すでに移行措置が行われている新しい学習指導要領ではますますレベル0の強化が行われようとしているのですね。
◇中学受験をしようと決断すると、このことがわかってくるのです。子どもたちは人間です。すべての人間は、論理的に、批判的に考え、創造する行為を有します。できる子だけがそうなのではないのです。そういうことがわかるわけです。子どもにたいする不安の本当のところは、今の日本の教育では、世界に学力で通じないということではなく、人間としてコミュニケーションをとることができないという不安なのです。

