◇先般、政治・経済と経済学が根本的に異なる科目であることをやや批判的に書きましたが、政治・経済での意欲的な問題が一橋大で出題されています。
◇原子力発電所の問題を取り上げたのは、タイムリーですし、表のデータ分析をさせ、その背景を考えさせる良問です。
◇次の第3問も、「政治・経済」の出題領域から「経済学」にアプローチするという意味で意欲的な問題です。やはり、国内の政治・経済分野の出題は一橋大に期待するのがよさそうです。
◇「政治・経済」について、センター試験やいくつかの入試問題(一橋大・東京学芸大など)を当たってみましたが、結論としては、「政治・経済」は「経済学=Economics」とは異なる科目である、ということです。
◇土浦日大のホームページに2011年度大学入試の結果が掲載されています。
◇卒業生数が155名ということ、そして卒業生を輩出して3年目ということを考慮すると、非常に高い実績だといえます。その数もさることながら、より注目に値するのが医歯薬系や理工系、さらに芸術系学部に進学する生徒の比率の高さです。
◇マスコミは、有名大学の合格者数ばかりを取り上げて高校の評価をしますが、合格者数よりも大切なことは、一人ひとりの生徒が有能感を持ちながら、それぞれの進路を切り開いていくということです。土浦日大のホームページにある中川校長先生のメッセージには次のように書かれています。
これまで,生徒に強く訴えてきたことは,各人が《自分と仲間と中等教育学校に「自信と誇り」を持つ》ということでした。
これから人生を構築していく青少年にとって,自分自身への自信と誇りを持つこと,そして,そのための懸命の努力をすることは,何よりも大切なことであり,中等教育学校としての教育の責務であると考えています。 →元のメッセージへ
◇AO入試や自己推薦入試を活用していることも土浦日大の特色のひとつです。こういった試験制度を活用する場合、生徒は、先生との対話を通して自分の特性や志向を見極めていきます。当然、一人ひとりに対するきめ細かな指導が必要になります。
◇以前、同校を訪問した際、たまたまある大学のAO入試の合格発表の時に職員室に居合わせていて、何人もの先生が大学のホームページに掲載される受験番号を覗き込みながら喜び合っている姿を見たことがあります。
◇多くの予備校や一部の進学校では、AOや自己推薦をあまり推奨はしません。一般入試より前に合格を決めてしまうと、合格実績が数として伸びないからです。しかし、土浦日本大学中等教育学校の合格実績にはそういう数字を超えた本当の実力が表れています。
◇数字よりも一人ひとりの生徒の未来を見守っている先生方の視線がそこにあるのです。
◇かえつ有明サイエンス科が主体となって実施する「作文入試」体験イベントをオブザーブしてきました。
◇サイエンス科主任の山田先生と放課後の学習支援をしているチューターが協同して、30数名の生徒の作文を指導する姿に接し、かえつ有明が目指す新しい「作文」入試の方向性が見えてきました。
◇「作文」といえば、一般的には「国語科」の指導内容と相場が決まっていますが、かえつ有明のサイエンス科では、どの教科にも必要となるスキルであるととらえています。学際的な知を目指すサイエンス科が主導して「作文」入試を実施するのは、そのような理由によるのでしょう。
◇体験イベントでは、緊張した面持ちで座っている体験者(受験生)に、大学生チューターが「サッカーとテニスについて考えましょう」と語りかけるように始まりました。「作文とはこう書くのです」なんていう大上段な構えとはかけ離れた、柔らかい調子です。最初は「スポーツという言葉から考えたことをマッピングシートに書いてみよう」という問いです。何を書いてよいかわからず、きょとんとしていた受験生ひとりひとりに、チューターたちと山田先生は、声をかけていきます。「野球・サッカー、なるほど。きみは競技名を書いたんだね。他にも挙げてみよう」「面白い解答だね、秋かあ。スポーツといえば秋だよね」こういった声をかけることで、周囲で手のとまっていた生徒たちも、「これなら自分にも書ける」とばかりにどんどん書き込み始めます。正解がひとつしかないと思っていると書けないのでしょうが、条件に合っている解答はすべて正解であるとわかれば、どんどん書けるのです。
◇山田先生は「アイスブレイキング」という言葉でこのパートの意味を説明してくださいました。まずは緊張した状態を解きほぐし、ブレインストーミングしやすい状態にするわけです。確かに授業では導入でよく利用する手法ですが、しかしこれがテストとなった場合はどのように評価するのでしょう。ふとそういう疑問がわいて、イベントの後でこっそり質問をしました。すると、「このパートは加点評価が基本です。もちろん空欄では得点をあげられませんが、5つの空欄に自分なりに考えた言葉を自由に入れてくれればそれを評価します」とのこと。ここから先は私の推測も入りますが、採点チームの担当がそれぞれの主観で解答の妥当性を判断するといった採点基準が採用されるのではないでしょうか。出題者も想定しなかったようなユニークな解答であれば、プラスアルファもあり得るということかもしれません。
◇受験生たちには、その後、テニスとサッカーに関するデータが掲載された基礎資料と、かえつ有明でテニス部サッカー部に所属している先輩のアンケート結果が渡されました。そこでの問いは、「テニスとサッカーの違いについて気がついたことを表にまとめてください」、さらに、「テニスとサッカーではどんな点が共通しているか、まとめてください」といったものでした。比較して、違いや共通点に着目することは、国語に限らずどの科目でも必要になることです。サイエンス科で「コンペア・コントラスト」と呼んでいるフォーマットを利用して、ここでも受験生たちは、みるみるうちに表を埋めていきます。
◇最後には、200字の意見・感想を書かせていたのですが、残りわずか10分強くらいの時間でほぼ全員が書き切っていきました。実はこの設問を考える上で、前問でやった相違点と共通点が生きてくるような仕掛けになっているのです。受験生は知らず知らずのうちに200字記述が書けるようになっていることに気づき、自ら驚いていました。それはイベント終了後に書かれた感想からはっきりと伺うことができます。
◇「自分にも書けた」という自信は、次の記述にもきっと力を与えてくれるでしょう。書いた内容を「正解/不正解」といった基準の中で判定するという意識ではなく、生徒とのコミュニケーションのきっかけにしようとするかえつ有明サイエンス科の「作文」入試は、これまでの入試概念を大きく変える可能性を秘めていると感じました。
◇土浦日本大学中等教育学校の「オープンハウス」に行ってきました。模擬店やバンドのライブといった「お祭り」は控えめで、学習成果の発表などがメインとなった学校紹介イベントでした。
◇中でも、英国ケンブリッジ(4年生―高校1年生)、そして、ボストン・ニューヨーク(5年生―高校2年生)への研修旅行の成果は、生徒の英語レポートが展示されている教室や、オーディトリアムで行われた英語スピーチコンテストでも存分に発揮されていました。
◇土浦日本大学中等教育学校の英語スピーチコンテストは、英語での表現力を競うものであると同時に、それぞれの研修旅行の体験をプレゼンする場になっています。前の年には、4年生と5年生は、それぞれ京都と広島に国内研修に行っており、その体験も、今回の海外研修での学習成果発表につながっています。
◇ケンブリッジと京都を比較すれば、それは例えば庭や風景の違いや文化の違いに結びつきます。また、グラウンド・ゼロの印象と広島の原爆ドームを訪れた時の印象を重ね合わせれば、世界の平和について考えることにもつながっていきます。こうして、体験学習が相互に関係しあいながら、知識が重層的になっていくわけです。
◇さらに、生徒たちは現地でインタビューまで敢行してくるのですが、そのインタビューも自分の発表テーマに合わせ、事前に内容をよく練っています。例えば、平和について訴える内容をスピーチした5年生は、ニューヨークの街頭で「オバマ大統領の核廃絶宣言をどう思うか」と質問をし、一般のアメリカ人が核兵器についてどういう意識を持っているのかをリサーチしていました。こういうふうに、ふだんのリサーチ学習を海外研修という体験学習に結びつけながら、生徒たちはグローバル社会を生きていく力を確実に身につけているのです。
◇別の会場では、英語のディベート大会も行われていました。どちらの会場でも目立ったのは、英語ネイティブの先生が積極的に会に参加し、司会進行まで務めていることです。土浦日本大学中等教育学校では、英語ネイティブの先生が授業を教えるだけのパートタイムではなく、フルタイムで日本人の先生と同様の責任を持って指導しているのです。「オープンハウス」といった通常授業以外のイベントでもネイティブの先生が主体的に関わり、現場を仕切っている姿が見られるのは、先生同士のコミュニケーションが密であればこそ可能になることです。
◇もう一つ、保護者と先生との距離が近いことも今回の訪問で気付いたことです。在校生のお母様方が、イベントを仕切っている先生に、ねぎらいの言葉をかけたり、一緒にイベントを盛り上げようとしたりしている姿を、何度も目にしました。
◇生徒がいきいきとしているのは、こうした学校内のコミュニケーションが活発であることと関係しているのかもしれません。今回の訪問で土浦日本大学中等教育学校の躍進の秘密を垣間見た気がします。
◇かえつ有明のサイエンス科が次年度に向けて新たな動きを始めたようです。6月の学校説明会で2011年度入試に「作文」入試が加わることがアナウンスされておりましたが、その問題作成チームには、サイエンス科のコアメンバーも参加し、問題の中身にも、サイエンス科の授業で採り入れられている手法が盛り込まれるとのことです。
◇学校説明会で配布されたサンプル問題を入手したので、ここに一部を紹介します。第1問は、「持続可能な社会」という言葉から連想することを書きなさいという問題です。

◇持続可能な社会という言葉を聞いたことのない生徒には厳しい設問のように感じますが、第2問では、持続可能な社会についての文章を読ませており、第2問に進めば、「持続可能な社会」がどのようなことを表しているかがわかるような仕掛けになっています。
◇左の図のように、いくつかの円の中に言葉を入れるというのは、サイエンス科では、5W1Hマップと呼んでいる手法で、リサーチをする際に調べる方向性を定めたり、あるいは、ブレストの際のツールとして使ったりするマップです。
◇サンプル問題とは言え、「作文入試」という新たな入試形態にチャレンジする第1問にこのような大胆な問題を据えたのは、かえつ有明の中でサイエンス科の試みがある程度浸透してきたということを意味しているのでしょうか。
◇当然、採点基準はどうするのかとか、想定しない答えが出てきた場合にどうするのかという議論が沸きあがるでしょう。むしろ、そういう議論を歓迎しているかのような、大胆な問題だなというのが私の第一印象でした。
◇しばらく、「作文入試」を追っていこうと思います。
◇先日土浦日大を訪問し、情報入試担当の田村先生にお話を伺ってきました。筑波エクスプレス快速だと秋葉原から45分でつくばに到着します。つくばから学校まではスクールバスが利用でき、座席定員制によりゆったり座れるので、生徒は通学時間を毎朝の予習時間として有効利用しているようです。
◇上野から常磐線の特急を利用すればやはり45分ほどで土浦に到着しますが、TXなら特急料金も不要で本数も多いので、こちらの方が便利で経済的です。訪問前に抱いていた通学についての私の認識は、がらっと変わりました。松戸や柏といった常磐線沿線だけでなく、秋葉原から北千住にアクセスしやすい東京北東部エリアの方も通学圏内となります。
◇土浦日大のホームページや学校案内ですぐに目につくのは、英国のボーディングスクール研修です。2年次と4年次に実施する海外研修では、1年次と3年次に実施する国内研修旅行と連携しており、京都・奈良の訪問で日本文化を学んだ上で、あるいは、広島研修で近代以降の日本や世界平和について考えた上で、それぞれイギリスを訪問する流れになっています。さらに、その学びの体験をオープンハウス(学園祭)で発表することも一連のプログラムとして練りこまれているわけです。
◇合格実績が飛躍的に伸びているのは、こうしたプログラムだけでなく、学校全体が英語教育に真剣に取り組んでいることの表れと言えます。常勤の英語ネイティブ講師が8名いるというのも土浦日本大学中等教育学校の教育の先進性の一つで、彼らは教えることだけを担当する「講師」ではなく、ホームルームや掃除といった学校での生活面や生徒指導まで担当しているとのことです。そういったネイティブ講師に日本の学校文化を理解してもらうよう、彼らとのパイプ役を果たしている英語科教員の不断の努力が背景にあるからこそ、土浦日大の今年の合格実績が生まれてきたのでしょう。
フォームとプロセス
◇サイエンス科リサーチブックを作成している図書館司書の眞田章子先生に話を伺いました。かえつでは、女子校時代から総合学習をやっていた伝統が素地としてあり、それが教科横断的なサイエンス科の誕生につながっています。さらに当時からずっと模索してきた探求型学習が、今のサイエンス科に発展してきたのは、「BIG6」というアメリカの情報リテラシーの手法を取り入れたことが大きいと眞田先生は話します。
◇言語技術的な面を重視することは、日本でも戦後すぐの時代に、国語教科書の「言語編」で試みられていたようです。実際に「言語編」教科書を見たという眞田先生は、その質の高さに驚くとともに、それが消えてしまった日本の教育状況に危機感を覚えたそうです。だからこそ、フォームやプロセスを重視したサイエンス科の存在意義をいっそう感じているのです。
自己表現の力
◇高校の必修科目である「情報科」でも、「サイエンス科」との連携を進めています。「情報科」は、2003年から普通科高校に必修科目として新設された教科で、情報の収集・分析・編集などのスキルを、コンピュータを使って習得します。中山忠先生は、アプリケーションソフトの利用を前提としながらも、最終的には、誰もがわかるようなプレゼンによって自己表現する力が大切だと話します。
◇その評価についても、サイエンス科との情報交換をするようになって以来、「自己表現の中身」に積極的に踏み込んだ評価ができるようになり、「情報科」が扱う内容の幅も広がってきたということです。
キャリアデザイン
◇英語科の永井仁先生は、サイエンス科で重視しているクリティカルシンキングは英語学習において日常的に活用していると話します。文法事項ひとつとっても、解答を与えてしまうより、生徒に「なぜ」と問いかけることが、有効なトレーニングになるそうです。また、英語という教科は、文化や習慣などを比較する場面が数多くあり、実際のコミュニケーションの場面でCTを駆使することが、これからのグローバルな社会では、必要となると話します。例えばNoと言われても傷つかないように自分の気持ちをコントロールできることは、文化の違いについてCTする能力が前提になるわけです。
◇また、情報があり過ぎる状況で、自分が取り入れるべき情報に自覚的かどうかは、勉強や学びだけではなく、生き方を決断するような場面でも重要になると、CTがキャリアデザインにも通じる力であることを指摘していました。
◇聖学院大学の入学前準備教育で開講される科目は、英語・数学・国語です。それぞれの授業の様子を覗かせてもらいました。
◇英語の授業は、映画の会話などを題材にして、興味を持たせるための工夫が随所に散りばめられています。Aeron ate chicken. Chicken ate Aeron. と英語の語順について話をしているかと思うと、冠詞を一つ入れ、Aeron ate a chicken. が喚起するグロテスクなイメージを伝えながら生徒の笑いを誘っていました。
◇小論文の授業では、喫煙する母親とサラリーマン風の男が待合室にいる状況を伝える短文を読ませた上で、思ったことをメモに書きつけるよう指示を出していました。「なんだ、この母親」「まずいっすよ」「あり得ないんだけど…」といった高校生に通じやすい言葉遣いで迫ったかと思えば、すぐ次の瞬間には「権利」「公共の場」といったキーワードもさりげなく提示。このあたりのスピード感が授業を飽きさせないコツでしょう。
◇数学では、公務員試験の題材から問題をピックアップして、無味乾燥な数式に対する抵抗感を少しでも和らげようとしているようでした。講師は、時に自分の高校時代の経験などを話しながら、リラックスした雰囲気の中で、授業を進めます。講義の合間に、生徒の机を回りながらアドバイスを与えるなど、「一人ひとり」に注目しているのが印象的でした。
◇一人ひとりへの気配りは授業だけではありません。アドミッションのスタッフや学生チューターは、アンケートや面談を通して、授業のレベルが適正か、また友人が出来ているかどうかなどといったことを全員について把握します。「面倒見のよい大学」と言われるゆえんですね。
◇初日、あれほど緊張した面持ちでいた生徒たちが、10日ほどして再度訪問したときには、すっかり聖学院大学に馴染んでいて、友人同士で語り合う姿があちこちで見受けられました。昨年この講座に受講生として参加していたという現大学1年生のチューターは、「今年の生徒は去年よりさらにいいですよ」と話していました。生徒へのあたたかいまなざしも、毎年確実に進化しているようです。