鈴木裕之の発言

2009 年 10 月 のアーカイブ

新しい学習プログラムの試み 4 -かえつ有明中高「サイエンス科」その4

2009/10/27

カテゴリー: 学校, 学習プログラム


◇かえつ文化フェスタで、中3生のサイエンス科プレゼンテーションを見学してきました。発表のテーマは、修学旅行で訪れた「京都」についてです。現地で体験したことと、本やインターネットで調べた情報をパワーポイントにまとめ上げ、グループ別または個人別に発表していました。
 
◇生徒たちは、あらかじめ与えられた「枠」(=手法)―今回は東京との比較対照(Comparing & Contrasting)という手法―に沿って、自分が関心を持ったテーマについて発表します。ただ「京都について」発表しなさいと言われるより、東京との比較というしばりが加わることで、逆にテーマが絞り込まれ、結果として様々な比較の観点が出てくることは前回書いた通りです。
 
◇「枠」(=手法)を習得しながら、同時に「枠」を相対化し、生徒自らの個性が発揮されているのは、プレゼンの各所に取り入れている「遊び」からも伺えます。絵文字やイラストを入れたり、ユーモアのある表現を盛り込みながら、情報の伝達だけでなく、受け手を意識した効果的なレトリックを使っていたことに驚きました。枠があることでかえって「遊び」も可能になるのです。
 
◇生徒自らが興味を持って選んだテーマですから、プレゼンが済めばそれで終わりというわけでもありません。今回のリサーチで京野菜を調べた生徒は、自宅近くのスーパーでも九条葱などの京野菜が売られていることを再発見していましたし、東京と京都の観光都市としての違いに着目した生徒は、通学エリアであるお台場や有明地域が外国人訪問者数で意外と高いランクにあることを再発見していました。
 
◇こういった再発見は、知識を定着したり、もっと調べてみたいという意欲となり、教科学習への効果も期待できます。一方で、このような気づきを促す存在があることも見落とせません。もちろんそれはファシリテーターとしての教師の役割です。
 
◇今回のプレゼンでも、サイエンス科主任の山田先生が、一人ひとりの発表に対しさりげないコメントをされていたのが印象的でした。このコメントこそ実は、次のステップへの仕掛けでもあるのです。生徒は情報収集や編集の仕方を学び、レポートやプレゼンを通して「枠(型)」を身につけながら、さらに先へと学びを進めていきます。教科横断的だからこそ、スキルの習得を重視しようとするサイエンス科の取り組みは、枠を与えることでかえって生徒の興味や関心を喚起し、彼らが教科的専門知を深めようとするエンジンになり得ているのだと思います。
 

新しい学習プログラムの試み 3 -かえつ有明中高「サイエンス科」その3

2009/10/09

カテゴリー: 学校, 学習プログラム


○かえつ有明が「サイエンス科」を誕生させる背景には、臨海副都心という立地条件も大いに関係しています。日本科学未来館や東京国際展示場、水の科学館などが点在するエリアで学べるというアドバンテージを活かすこと。これは、かえつ有明が掲げる「キャンパスは副都心」という発想の原点であったと国語科の髙木先生は話します。
 
 
○そして、かえつ有明の「サイエンス科」の独自性は、こういった周囲の環境を活かすための工夫を、教科としての「理科」だけに吸収してしまうのではなく、情報リテラシーやプレゼンテーションスキルを核とした方法に発展させてきたところにあります。最近の子どもたちが人前で自己主張できないと言われるようになっていることや、いわゆる「理科離れ」といった日本の状況が、かえつ有明の先生方の問題意識の根底にあったこともあり、どのように自己主張できる生徒を育てるのか、どのように情報収集の方法を習得させるのかという方法論にこだわり、「サイエンス科」を現在の姿まで進化させてきたわけです。
 
 
○見学させていただいたある授業では、奈良・京都への修学旅行から戻ってきた中3生が、インターネットでWikipediaや統計資料などを調べ、パワーポイントに自分で撮影した写真やインターネットから取り込んだグラフなどを資料としてはめ込んでいました。社会人でも十分に使えない人がいる編集スキルをすでに習得している生徒にも驚きますが、ここに至る綿密なプログラムが存在しています。
 
 
○教室前方のホワイトボードには、<Comparing and Contrasting>と書かれており、各生徒はコンピュータでの作業をしながら、東京と京都の比較・対照についてワークシートに書き込みを行っています。ある生徒は和菓子に注目、またある生徒は町並みの違いに注目、水の違いに取り組んでいる生徒もいました。つまり、「一人ブレスト」を経て、情報収集すべきテーマについては十分に掘り下げられているので、コンピュータによる検索と編集作業にそれぞれ集中できるわけです。
 
 
○中3生の授業では、コンピュータやインターネットを駆使していましたが、学年に応じて、プレゼンする際の道具や検索する媒体などは意識的に変えていると理科の宮本先生は話します。リサーチするにあたって生徒は、書き込み式の「リサーチノートブック」を利用する一方、リソースとなる百科事典や図書館の利用法といった情報リテラシーも、別の冊子で学んでいきます。こういったワークシート類が情報基地であるドルフィンにはたくさん集約されているのです。
 
 
○サイエンス科の取り組みは、まだまだ奥が深そうです。