◇聖学院大学の入学前準備教育で開講される科目は、英語・数学・国語です。それぞれの授業の様子を覗かせてもらいました。
◇英語の授業は、映画の会話などを題材にして、興味を持たせるための工夫が随所に散りばめられています。Aeron ate chicken. Chicken ate Aeron. と英語の語順について話をしているかと思うと、冠詞を一つ入れ、Aeron ate a chicken. が喚起するグロテスクなイメージを伝えながら生徒の笑いを誘っていました。
◇小論文の授業では、喫煙する母親とサラリーマン風の男が待合室にいる状況を伝える短文を読ませた上で、思ったことをメモに書きつけるよう指示を出していました。「なんだ、この母親」「まずいっすよ」「あり得ないんだけど…」といった高校生に通じやすい言葉遣いで迫ったかと思えば、すぐ次の瞬間には「権利」「公共の場」といったキーワードもさりげなく提示。このあたりのスピード感が授業を飽きさせないコツでしょう。
◇数学では、公務員試験の題材から問題をピックアップして、無味乾燥な数式に対する抵抗感を少しでも和らげようとしているようでした。講師は、時に自分の高校時代の経験などを話しながら、リラックスした雰囲気の中で、授業を進めます。講義の合間に、生徒の机を回りながらアドバイスを与えるなど、「一人ひとり」に注目しているのが印象的でした。
◇一人ひとりへの気配りは授業だけではありません。アドミッションのスタッフや学生チューターは、アンケートや面談を通して、授業のレベルが適正か、また友人が出来ているかどうかなどといったことを全員について把握します。「面倒見のよい大学」と言われるゆえんですね。
◇初日、あれほど緊張した面持ちでいた生徒たちが、10日ほどして再度訪問したときには、すっかり聖学院大学に馴染んでいて、友人同士で語り合う姿があちこちで見受けられました。昨年この講座に受講生として参加していたという現大学1年生のチューターは、「今年の生徒は去年よりさらにいいですよ」と話していました。生徒へのあたたかいまなざしも、毎年確実に進化しているようです。
2010 年 2 月 のアーカイブ
聖学院大学 入学前準備教育における学びのクオリティ 2
2010/02/22
カテゴリー: 学習プログラム
新しい学習プログラムの試み 8 -かえつ有明中高「サイエンス科」その8
◇教科横断的なサイエンス科の授業によって、各教科の授業や生徒の反応はどのように変わってきたのでしょうか。かえつ有明の先生に取材をしました。
◇国語科の宇野岳史先生は、中1段階ですでに生徒は、「情報探索のフレーム」を手に入れつつあると話します。ワークシートの手順に沿ってリサーチを進めることで、知らず知らずのうちに情報収集の視点をつかんでいくようです。
◇しかしながら、納得のあるテーマが見つけられず、あるいは自信がなくて、前に進めない生徒も当然出てきます。そんなときには、苦手意識につながる前に、「真似ることへの抵抗をなくし、真似る中からやがてオリジナリティが出てくることを伝えるようにしている」と宇野先生は話します。
◇もちろん生徒自身が解決できるまで待ってあげる態度も時に大切で、中2・中3と学年が上がるにつれて、子どもたちから「離れる」ように意識するとのこと。課題を乗り越えるための手助けと自分でできるようになるのを待ってあげることのバランスをどう取るかに心を砕いているようでした。
◇同じく国語科の大木理恵子先生も、困っている生徒にいきなり解答を与えるのではなく、「整理の仕方」を教えてあげることが大切だと話します。このことは、単にリサーチ課題を乗り越えるというだけではなく、思春期における生徒たちが、自分自身の大きな課題を考えることにもつながっていくのです。
◇例えば、サイエンス科でもよく利用するマンダラートなどで、自分の抱えている問題を並べてみる。また、他人と話をすることで、モヤモヤしている自分を客観的に見つめてみる。こういうことを通じて自分にとっての課題がはっきりすれば、その課題は乗り越えられると話します。
◇これまで、クリティカルシンキング、あるいはマッピングやブレストといった、サイエンス科が取り入れている手法に焦点を当ててきました。手法はあらかじめ自明のものとしてそこにあるわけではなく、「どうしたら生徒が課題を越えられるか」ということを徹底的に追求しようとする先生の熱意の表れなのだということを今回の取材で改めて確認できました。
◇「子どもが目を上にあげる授業」― 大木先生は、盛り上がらないと意見は出てこないし、脳みそを働かせることはできないと、そういう授業をするための「工夫」や「仕掛け」の重要性についても話してくれました。
◇生徒への「熱い思い」と、それを形にする「手法」の両面が、サイエンス科を支えているのです。
聖学院大学 入学前準備教育における学びのクオリティ 1
2010/02/08
カテゴリー: 学習プログラム
◇この2月5日、聖学院大学ではAO入試などで一足早く入学を決めた生徒を対象にした入学前準備教育がスタートしました。この講座は、大学で学ぶために必要となる基礎学力の養成などを目的に、聖学院大学では10年も前から続けている講座です。今回は、早期に入学が決まっている生徒を対象にした「2月講座」で、一般入試で合格した生徒対象には「3月講座」が実施されます。
◇最近では、入学前に同様の講座を実施する大学もちらほらと出ていますが、10日以上にわたって講座が開かれるというのは全国でも珍しく、そのため聖学院大学の入学前準備講座は、読売新聞・文藝春秋・NHKなどのマスコミに取り上げられるほど注目されています。
自ら発信する力
◇先ほど基礎学力の養成と書きましたが、この講座では、受験学力とは異なる意味での「学力」養成を目指しています。講座の最終日に自己プレゼンテーションをするプログラムが編成されていることからも、いわゆる知識の習得だけでなく、自ら発信する力を伸ばそうとしていることがわかります。
◇そのためのコミュニケーション環境も手厚く、クラス授業の合間に、在学生や院生らとの個別面談の時間が用意されています。受講者は、全員が自分の話を面談の中でじっくり聞いてもらえるのです。中にはこれまでそういう体験がほとんどなかったという生徒もいるようで、こういう一人ひとりに目を向ける環境の中で、学習意欲や自分に自信を持つ態度が育まれていくのでしょう。
◇また、入学前のこの時期は学科に分かれていないので、学科の垣根を越えた友人作りというメリットもあるようです。これまで入学前準備教育をずっと育ててきた山下広報企画部長は、学習面の重要性とともに、友人を作ろうとすること、そして、自分から先生やスタッフに質問やアドバイスを求めることの大切さをオリエンテーションで次のように伝えていました。
聖学院大学は『面倒見がよい大学』という定評があります。しかし、それは先生が学生を管理したり指示を出したりするという意味ではありません。きみたちが自ら考えていけるようにサポートをするという意味で面倒見がよいのです。聖学院大学は、『入って伸ばす』ではなく、『入って伸びる大学』なのです。
◇初日、授業が始まる前のクラスの様子を覗いてみました。初めて顔を合わせる生徒同士は、まだ緊張の面持ちでしたが、さっそく数名の学生同士が「自主的に」声をかけて、友達になろうとしている場面がちらほらと見られました。10日余りの間にどういう変化が見られるのか、じっくり見てレポートしようと思います。

