左腕のカメラマン林建次さんが立つ場所~モーメントG|ひとのおすすめ

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左腕のカメラマン林建次さんが立つ場所~モーメントG

左腕のカメラマン林建次さんが立つ場所~モーメントG

左腕のカメラマン林建次さんが立つ場所~モーメントG

「生きるために人は夢を見る―左腕のカメラマン林建次」。作家の伊藤史織さんが「中学道徳2」(光村図書)のために書いたエッセイ。23歳のときに交通事故で右手の機能を失ったが、左手でカメラを持ち、レリーズを口にくわえ、歯でシャッターを切るスタイルで、生きるために夢を見るカメラマンの道を歩むことになった。

 人と人との出会い。それは偶然なのか、引き寄せられるのか、引き合うのか。畏友斉藤崇(トリニティ社長)が引き寄せられた『ひと』だと聞き及んで3年、ついに林建次さんに会えた。

 そして、震撼と驚いた。カメラマンの仕事が、こんなにも立ち臨む永遠の覚悟の連続なのかと。林さんの撮る相手は、自ら選んだ場所で最高の魂ぎりぎりの自分に挑戦する『ひと』である。あるときはボクサーであり、あるときは役者。

 ふだんの生活で、人の表情と肉体は、意匠であり、本来の自分はそこにはいない。しかし、林さんが撮る表情も肉体もその『ひと』の魂の遍歴である。最高の魂ぎりぎりの極点まで恐怖と不安に呻きつづける魂の肉体を周到に撮り続ける。その現場はおそらく肉体の吐息とシャッターの音だけの果てしない空間になっているに違いない。

  

 撮る相手に接近し魂の叫びにシンクロするまでシャッターを切る。そうして、最高の魂ぎりぎりの極点の次の瞬間が訪れるのだ。ボクサーが、役者が、そして林さんが、現場空間の眼差しと時間の微分点と光の粒子とが交差する一瞬に立ち臨む。魂の遍歴の極限が立ち現れるその瞬間は林さんのシャッターにのみ刻まれるのだ。

 極点を超える至上の瞬間は一瞬のバランスのあと、あっという間に消失する。その点は虚数根(imaginary root)。林さんによると、シャッターの降りる瞬間は、被写体が見えなくなる想像上の瞬間なのだと。

 林さんも撮る相手もその魂のトルソーを復元する瞬間をいっしょに欲求する。その瞬間に立つ場所を、なんて呼んだらよいのか、ずっと考えていたが言葉が見つからない。「モーメントG」。それではあまりに浅薄である。

 林さんとの出会い。『ひととひと』との出会いに立ち臨むことは、見えざる力に震撼とさせられる瞬間なのだ。


◆ 林建次さんと伊藤史織さんがシェアしているブログ) → 「写真と言葉」オフィスミギブログ

文☆本間 勇人 

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